屋久杉先生著　超短編小説「涙入りのカフェラテ」

今宵は、超短編物語「涙色のカフェラテ」の話をしましょう・・・

 

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「いらっしゃいませ・・・。

 

ようこそ、Midnight Cafe “Psychology” （深夜喫茶　サイコロジィ）☕️へ 。」

  

お客さん、いつものコーヒー☕️でよろしいですか❓

 

「いいえ、今夜はカフェラテをお願いします。」

 

かしこまりました。

 

 

はい、どうぞ。

 

お客さん、どうかしましたか・・・？

 

瞳が 涙で潤んでらっしゃる・・・。

 

良かったら ハンカチをどうぞ。

 

「ごめんなさい。こんなところで泣いてしまって・・・。」

 

いいんですよ、気にしないで下さい。もうすぐ閉店だから、クローズドにしておきます。

 

何も気にせず、ゆっくりして いきなさい。

 

 「マスター、ずっと耐えていて、もう耐えられなくて・・・」

 

そうですか・・・、ひとりで耐えていたことがあったのですね、

 

さぞやお辛かったでしょう・・・、話したくないことは、無理に話さない方がいい・・・

 

 

お客さん、カフェラテに涙のしずくが入ってしまいましたね。

涙入りのカフェラテになってしまいましたね。

 

涙入りのカフェラテはきっとしょっぱいですよ。

 

涙入りのカフェラテより美味しいカフェラテを後でつくって差し上げますから、うんとお泣きなさい・・・

 

 「マスター、もう涙が止まらなくて・・・。実は、職場で上司や同僚からいじめやパワハラをされていて、それがずっと続いているんです、もう辛くて、苦しくて、悲しくて。」

 

それでいい、それでいいんです。

 

お客さん、お客さんはそんなにまで心に傷を受けながら、今まで私の店で笑顔を見せていたのですね。

 

やっと素顔を見せてくれましたね。それでいいんです。だから、今夜はうんとお泣きなさい・・・。

 

 「・・・ごめんなさい、マスター。」

 

お客さん、どうして涙が止まらないのか分かりますか・・・？

 

それはねぇ・・・・

 

苦しんで、苦しみ続けて・・・

 

胸を痛め、痛め続けて・・・

 

我慢して、我慢し続けて・・・

 

耐えて、耐え続けて・・・

 

悩んで、悩み続けて・・・

 

本当は、泣きたいのに、泣けなかったんですよ・・・

 

本当は、大声で叫びたいのに、叫べなかったんですよ・・・

 

本当は、自分の気持ちを伝えたいのに、伝えられなかったんです・・・

 

自分の気持ちを受け止めて欲しかったのに、受け止めてもらえなかったんです・・・

 

その現実があまりにも刹那かった・・・

 

その現実があまりにも悲しすぎた・・・

 

お客さん、だから

 

うんとお泣きなさい・・・

 

泣いて、泣いて、たくさん泣いて、

 

少しでも悲しみにあふれたあなたの心を解き放した方がいい。

 

泣いて、少しでも辛さにあふれたあなたの心を解き放した方がいい。

 

泣いて、少しでも悔しさにあふれた

 

あなたの心を解き放した方がいい。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 

 

☕️☕️☕️☕️☕️☕️☕️☕️☕️☕️☕️☕️☕️

 

「マスター、どうもありがとう。ちょっとすっきりしました。」

 

それは良かった・・・

 

お客さん、どうしてすっきりするのかご存じですか？

 

「ええっ、・・・全く分かりません・・・。」

 

人間の脳にはねぇ、とても大切な機能がそなわっているんですよ。

 

それはね、

 

涙には、脳の中にある悲しみのストレスホルモンの物質を洗い出してくれる機能なんです。

 

だから、今までに経験があるでしょう・・・？

 

泣いた後は、すっきり感があるでしょう。

 

「マスター、すごいですね。そんな経験、今までに何度もありました。

幼いころも、小学生の頃も、嫌なことがあって、泣いたらすっきりしたのは、そのおかげなんですね。涙って、すごいなぁ～、そんな力があるんですね。」

 

「ところで、マスター？　涙って、何でできているんでしょうね ・・・？」

 

  涙はね、あなたの「血」なんですよ。

 

「ええ～っ、私の血なんですかぁ？」

 

涙はね、あなたの体を流れている「血」が変身したものなんです。

 

 涙腺の細胞膜が、赤血球を通さないから、透明に近いんです。

 

だから今夜、あなたが流した涙は、あなたの心臓から送り出された「血」が涙に変身したものなんです。

 

「ええ～っ！　私の血なんですか！　出血多量で死んじゃいますよォォォ～！」

 

ハハハ・・・、大丈夫です。

 

どれだけ涙を流せばいいかは、ちゃんとあなたの「体」が決めてくれます。

だから、涙入りのカフェラテになっても大丈夫なんですよ。

 

あなたの悲しみや苦しみや悔しさを

 

あなたの「体」はちゃんと知っている。

 

だからね、何も心配しなくていい。

 

あなたの「体」は全部分かっているんだ。

 

 さて、涙入りのカフェラテじゃなくて温かいカフェラテをおつくりしましょう・・・

 

 

ええっ、本当にいいのですか❓

 

 

そうですねぇ・・・

 

冷めてしまいましたけど、

 

 

今のあなたは、

 涙入りのカフェラテの味を忘れないでおきたいのですね・・・

 

どうしようもなく辛かったんでしょう。

 

どうしようもなく苦しかったんでょう。

 

さあ遠慮なく、

 

お泣きなさい・・・

 

泣いて、

 

その苦しみを解き放した方がいい・・・

「グスッ、グスツ、エエェ～ン、エエェ～ン・・・・」

 

それでいい、それでいいんです。

今夜はうんとお泣きなさい・・・

 

 

出典　ネスレアミューズ

https://nestle.jp/fun-picks/topic/service/220422-2.php

 

🌹🌹🌹この超・超・超・短編私の苦しんでいる大切な教え子とかけがえのないフレンドに捧げる・・・